これからのSDGsは、
「自分にとって心地よいもの
=環境にとって優しいもの」
になっていく

SDGsに関心はあるけれど、何から始めたらよいかわからない――
Tavieaはそんな人たちのジレンマを解消することを目的に、2021年8月に発売された新しいスキンケアシリーズです。Tavieaが目指すのは、「自分にとって心地いいものを選んだら、それが環境への配慮にも繋がっていく」といった“等身大”のSDGs。
今回は、SDGsを軸とした活動に造詣が深く、コスメへの興味関心が高い株式会社arca 代表 /クリエイティブディレクターの辻愛沙子さんと、「Taviea」の商品開発者・小西由起の対談が実現。SDGs迷子になっている人たちが小さな一歩を踏み出すためのヒントを探っていきます。

■社会に出てようやく自分ごと化されたSDGs

―お二人がSDGsについて知ったきっかけを教えてください。

辻愛沙子さん(以下、辻):何か具体的なきっかけがあったかと聞かれると難しいんですが、これまで人生の中で感じてきた社会課題の数々が、実はSDGsという概念に含まれると認識したのは社会に出てからですね。仕事をしていく中で、よりリアリティを持って様々な課題に向き合うようになり、事業成長だけでなく人権や環境問題など複合的に取り組んでいかなければ、サスティナブル(※1)ではないーー。そんなことを実感し始めた頃、徐々にSDGsという言葉の知名度が上がってきたという順序だったように思います。

(※1)将来にわたって機能を失わずに続けていくことができることシステムやプロセス

―ご自身が感じて来られた社会課題には、具体的にどのようなものがあったのでしょうか。

辻:個人的な実体験としてやはり感じるのは、まず「ジェンダーギャップ」です。経済の領域では、いまだ随所で感じる根深い問題だなと。日常の中で「若い女の子には分からないかもしれないけど〜」というあからさまな偏見を向けられることもありますし、もう少し引きの目で見てみると、上場企業の女性役員の割合はたった5%に止まっています。構造的にも意識的な部分においても、まだまだ課題は大きいように思います。それから貧困問題もありますね。母が海外で孤児院をやっていて、私自身もそこで一緒に生活をしたことがありますし、実はその国に里親制度を介した弟妹がいるということもありまして。実体験を通して、比較的若い頃からSDGsという概念に包括される社会問題を身近に感じてきたと思います。

実際にビジネスサイドからアクションできたのが、2019年の「Ladyknows」というプロジェクトで、性差別や女性の生きづらさにスポットを当てた様々なイベントを開催しました。キャリアが積み上がるとともに、ようやく自分にもビジネスとしてのSDGsを実践できるようになってきたのがこの頃です。2021年5月からは、社会課題からカルチャーまで、現代の大人たちが今改めて知っておきたい教養を学ぶコミュニティ型スクール『Social Coffee House(ソーシャルコーヒーハウス)』の運営を通して、また新たな視点からSDGsと向き合っています。

―小西さんはいかがでしょうか。

小西由起(以下、小西):私はBCL社に転職する以前から化粧品業界で仕事をしているのですが、企業としての 取り組みや社員教育を通してSDGsという概念に触れたというのが最初のきっかけでした。ただ、化粧品業界はSDGsへの取り組みが遅れていると言われていますし、ビジネスとして実践できている範囲もまだまだ限定的です。これから先、いかに各社が推進していけるかが課題になっています。私個人としては、今回Tavieaの商品開発に携わったことを機に、よりSDGsが自分ごとされたという実感を持っていますね。

■小さな消費活動から就職活動まで。SDGsはとても幅広いテーマ

―辻さんの同年代の方たちには、脳内シャッター派と悩めるSDGs派、どちらのタイプが多いと感じますか?

辻:私は95年生まれでZ世代(※2)の一番上にあたる年代であり、ミレニアル世代(※3)とのちょうど境目でもあります。まず前提として言いたいのは、私は「世代」より「時代」という考え方を大事にしていて。時代における価値観というのは確かにありますが、同じ世代でも、人によって捉え方は千差万別だと思っているんです。今の時代の価値観を背景に育ってきた10代20代は、やはりSDGsや社会課題に関心が高い傾向にあると感じます。ただ、その関心をどうアクションに繋げていくべきか、少し悩んでいる人たちも多いのではないでしょうか。SDGsというと包括するテーマが多岐に渡り、あまりに非常に壮大なので、自分の手でアクションを起こすまでに少し距離がある、イメージが湧きにくいと言いますか。

(※2)1995年から2015年の間に生まれた世代
(※3) 1980年から1994年の間に生まれた世代

―関心はあるけれど、どこから手をつけていいのかわからない。まさに悩めるSDGs派ですね。

辻:そうですね。今の時代の20代には、結婚をまだしていない人も多く、比較的自由に使えるお金がようやく増えてきたという段階です。買い物をするときも、一歩立ち止まってその消費活動の意味を考える余裕ができ始めたタイミングでもあるなのかな、と。一方で、さらに下の10代後半〜20代前半の人たちの間では、最近「エシカル就活」という言葉が出てきています。就職面接の際に「御社では環境に対しどのような取り組みをしていますか」「女性役員は何名ですか」といった質問を投げかけるそうなんですよ。仕事に就く上でも、社会への責任や役割をすでに考えている。SDGsに対してかなりストイックに向き合っている世代とも言えます。

小西:エシカル就活……。初めて聞きましたがとても驚きました。「女性の社会進出」と聞くと広い範囲のことを想像しますが、自分の職場における女性役員の割合を問うというのは、かなり具体的な関心ごとだからですよね。私は30代前半で辻さんより上の世代ですが、周囲を見てみると、結婚をして子どもができて、「将来我が子がよりよく生きられる環境を残したい」といった方向でSDGsに関心を持ち始めた人が多い印象です。

辻:一見遠い世界の話のように思えますが、SDGsが採用から消費行動に至るまで広く包括的なテーマだと考えると、消費者や求職者に選ばれる立場の企業側もまた無関係ではいられないと思います。これまでは「環境問題を考慮した商品」というと値段が高く、余裕のある層にしか取り入れづらい側面がありました。けれど、生活者が求めるようになっていくにつれて商品の選択肢が増え、価格帯においても徐々に一般化されてきているように思います。徐々に消費者の意識が変わってきていますから、商品開発やデザイン面においても、真面目に取り組まざるを得ないフェーズに来ているのかな、と。

■環境に配慮した新しいカテゴリ「クリーンビューティ」

―Tavieaはクリーンビューティに挑戦された商品だと伺いました。改めて、クリーンビューティとはどのような考え方なのでしょうか。

小西:クリーンビューティは、ナチュラルコスメの中のひとつのカテゴリです。まだ生まれて間もないカテゴリなので公式な決まりや認証機関などはなく、解釈もかなり幅広いものになっています。「人の体に害となる成分を使用しない」「天然由来の成分を使用する」「環境と動物に配慮している」という3つのポイントをクリアしていれば、現時点ではクリーンビューティと定義できるとされています。Tavieaのように新たに参入するケースもありますし、従来のコスメがこの3つの要素を満たしていたということで、後からクリーンビューティと呼び始めるケースもあります。

―「肌と環境に優しい」というTavieaのスキンケアシリーズが、そのほかに意識された点をお聞かせください。

小西:まず環境面でのお話をさせていただきますと、先ほど辻さんが動物愛護のお話をされましたが、Tavieaは一切動物実験を行わない「クルエルティフリー」の化粧品です。パッケージに関しても極力シンプルなものを目指した結果、ボトルにFSC認証紙(※4)を巻きつけただけのデザインに行き着きました。そしてこだわったのが、クリーニングウォーターを495mlの大容量ボトルにした点です。買い替えの周期を長くすることで、プラごみの削減を目指しています。

(※4)管理された森林で伐採した木材を消費者に届け、得られた利益を生産者に還元するという国際的な取り組みを介して作られた、環境に負荷をかけない紙。

■こだわりのテクスチャと新機軸「日光浴コスメ」

辻:Tavieaのプロダクトを実際に試させていただきましたが、しっかり美容面での効果を担保しつつ、その上で環境にも配慮されている点は本当に素敵だと感じました。環境にだけ優しくても、肌が満足に潤わなかったり高価すぎて買えなかったりしたら、それは結局サステナブルではないですよね。人に優しいということが前提としてある中で、たとえば包装がミニマルで開けるのが楽だとか、買い替えの手間も省けてたくさん使えるとか、環境にも配慮されているという点で、持続して使い続けられるプロダクトだと思います。

小西:ありがとうございます。まさに開発の背景にあったのが、「化粧水を切らしてしまったときにたまたま手に取ったら使い心地がよくて、しかも環境にも優しいみたいな商品があったらすごくいいかも」という発想だったんです。

辻:そうだったんですね。私結構な美容オタクなんですけど、どうしてももったいなくてちまちま使ってしまうんですよ(笑)。その点Taviaは大容量なので、ドバッと使えるところが最高です。特に気に入ったのがピュアハイドレーターのテクスチャで。普段から水クリームが大好きでいろいろ愛用しているんですけど、ピュアハイドレーターはベタつかないのにしっかり潤ってくれて、その後の化粧ノリもかなり良くなって本当に優秀でした。

小西:テクスチャにはかなりこだわって開発したのでご実感いただけて嬉しいです。ピュアハイドレーターは厚めに肌に塗って寝るとスリーピングパックとしても使えて、翌朝の肌がとても潤うので、乾燥が始まるこれからの季節にオススメです。それからTavieaには、通常屋外で紫外線に当たったときに体内で作られるビタミンDの生成を促進させてくれる成分(※5)が入っているんです。よく日光浴をするとからだや骨が強くなるといいますが、それが実はビタミンDが体内で生成されるからなんです。肌に対してはビタミンDがターンオーバーを促進してキメを整え、透明感を与えてくれる働きがあると言われています。今後「#日光浴コスメ」として広めていこうと計画しています。

辻:すごくいいですね。いまはリモートワーク中心で屋外に出る機会が減った方も多いですし。私自身がもともとかなりのインドア派で、血液検査をするといつも「ビタミンDが不足している」というデータが出て日頃サプリで補っているので、まさにメインターゲットという感じがします(笑)。

■パッケージへの配慮は今後の大きな課題

―上のデータを受けて、辻さんが感じられたことをお聞かせください。

辻:SDGsの観点から物を選ぶことを想像したとき、知識がないと「環境に優しいか」「自分に優しいか」どちらかの選択を迫られるような感覚を持ってしまうと思います。だけど、環境にはいいけど美容効果のない化粧水を使ってまで、砂漠に緑を増やしたいと考えられる人はなかなかいないのが実際のところですよね。
一方Tavieaのように、テクスチャや使い勝手、大容量によるコスパのよさといった軸から入ることができて、結果的にそれが環境にも自分にも優しくすることにもつながるという健全なSDGsへの入り口もある。「必ずしも二者択一ではない」ということをもっと広めていければと思います。

―パッケージというものが化粧品に与えるブランディングも大きいと思いますが、Tavieaのように思い切って削減することもひとつの意思表明でもありますよね。

辻:私はデザインの仕事をしているので、パッケージがいかに重要かということがとてもよくわかります。特に化粧品において、凝ったパッケージをやめるというのは潔く勇気のある決断だと感じました。そういった覚悟と心意気を持つ企業というのは、これから先どんどん消費者に選ばれていくような気がします。少し話が逸れますが、Tavieaのパッケージを見たときに、かなりジェンダーレスなデザインだと感じたんですよ。そこもすごくいいなと。

小西:気づいてくださってうれしいです。ご指摘のとおりTavieaは男女関係なく、むしろ大容量で、家族一緒に使っていただけることも想定してあえてニュートラルなパッケージデザインにしています。化粧品のパッケージにクリーンビューティ、広くはSDGs的な考え方を取り入れるのは、やはりまだ難しい問題でもあるんですよね。環境のことを考えれば考えるほど、見た目の美しいものがはつくれなくなっていく。Tavieaのように「シンプルに振る」という方向とは別に、リサイクル資源を活用していかに魅力的なデザインを考えるかというのも今後私たちが取り組むべき仕事のひとつだと、よく社内の企画メンバーやデザイナーとも話しています。

■SDGsを継続するために「できる範囲のことから取り組んでいく」

―最後に、対談を通して感じられたことや、今後の展望についてお聞かせください。

辻:化粧品もそうですが、どんな商品を選択するかというのは人それぞれ、多種多様であるべきだと思うんですね。繰り返しになりますが、決して二者択一ではない。結局トレードオフになってしまうと、本来のSDGsの考え方とはかけ離れてしまいますから、たとえば“ときめき”みたいに、自分の嬉しさを優先するような消費活動だって大切にすればいいと思うんです。

ポイントは、ライフステージに応じて「できる範囲のことから取り組んでいくこと」。そういった価値観を、一生活者として、発信者・クリエイターとして、そして経営者として、できるだけ多方向の主語を使いながら、そして社会と連帯しながら、社会へ向けてアプローチをしていきたいと今日改めて感じました。

小西:人が化粧品を選ぶモチベーションって、やっぱり「綺麗になりたい」という願いから来ていると思うんです。その部分を、作り手としては絶対にないがしろにしたくない。その信念はこれからも変わりません。一方でクリーンビューティを始めとした、環境にも配慮するような新しいカテゴリについてもより柔軟に対応しつつ、できるだけ多くの方に「使ってみたい」と感じていただけるような商品を作り続けることが、私たちにとっての使命であると改めて感じさせられました。本日はありがとうございました。

(取材・執筆 波多野友子)